暗譜のこと

人前で演奏するとき、私は譜面を置かずに、暗譜で弾いています。

ときどき「どうやって暗譜してるの?」「どうして暗譜するの?」と訊ねられることもあるので、今回はそのことについて書いてみようと思います。

あくまで、現時点での私個人の考えや方法を、私自身のメモも兼ねて書いています。
子どもの頃に音楽の勉強を専門的にしてきたわけでもなければ、音大出身でもなく…、大人になってからアコーディオンを全くのゼロから趣味として始めた私個人のメモです。。

暗譜する理由

ひとつは、楽器本体の美しさや、蛇腹ジャバラを動かしながらの 鍵盤・ボタンの指さばき等の演奏姿の楽しさ(“見る”のも楽しい!も、アコーディオンの魅力の1つだと思うので、
譜面を見ながら演奏すると(譜面台があると)、聴いてくださっている方から見たときに、譜面台で 楽器や演奏姿の一部または殆どが隠れて、見えない箇所がでてきてしまうからです。

もうひとつの理由は、暗譜することで 音符を追う意識を少なくできるので、余裕ができ、他のいろいろなことに、より意識を向けられるようになるからです。

詳細は、以前のコチラの記事(※記事の該当箇所にリンクしています)に書いていますので、ここでは割愛します。

上記の記事にも書きましたが、そういうわけで 私は、暗譜は 練習過程の最後の方でするのではなく、結構早い段階で 一旦ざっくり暗譜しています。

暗譜する方法

私の場合は、「感覚で覚える」のと「頭で覚える」の両者、ハイブリッド暗譜(?)です。
それぞれについて書いていきます。

感覚で覚える

箇所によっては、練習していくなかで 自然に覚えていることもありますが、
暗譜を意識して練習する場合は、なんとなく指が自然に動くくらいまで、何度も何度も繰り返し弾きます。反復練習で指や身体に覚えさせるイメージです。

周りの方に暗譜の方法を聞いてみると、大半の方が このように感覚で覚えている印象です。

「緊張して頭が真っ白になったけれど、指が勝手に動いて どうにか弾けた」と たびたび聞くことがありますが、それはこの練習の効果でもあると思います。私自身もそういう場合もあります。

ただ、人前で弾くことを想定した場合、暗譜の方法が この「感覚‟だけ”」というのは、私にとっては あまりにもスリリングです!

というのも、その勝手に指が動いているときは、自身では ‟忘れている”ということを分かりながら弾いている場合もあり、その場合は、曲の最後まで ずっと「最後まで弾き通せるのだろうか…」と 内心ではヒヤヒヤしながら弾くことになるため、個人的には ‟楽しさ”よりも ‟スリル(マイナスな感情)” が 勝ってしまいます…。

また、そもそも人前で弾くときは、通常の感覚とはいろいろと異なっており、そうしたなかで止まってしまうと、全くもって収集がつかなくなってしまう場合もあります。

そのために練習では、緊張して弾く練習=本番で演奏しているときに見える景色を想像して演奏する練習もしますが、それでも補うのが難しい場合もあります。

…そういうわけで、このような不安要素をできるだけ少なくするために、私は ‟感覚で覚える”だけでなく、それとは別に ‟頭で覚える” こともしています。

私なりのイメージでは…、たとえば ヨットに乗っているとして、
ふだんは「風」で進んでいるけれど、風がやんでしまい進めなくなったときのために「エンジン」も搭載しておく(風がやんでヨットが止まってしまいそうになったら、エンジンに切り替えて進む)という感じです。

ここからは、そのことについて書いてみます。

頭で覚える

前述の「感覚で覚える」のは、‟とにかく何度も弾く”というように、「量(弾く回数)」の比重が大きいですが、
こちらの「頭で覚える」方は、弾く回数というよりも、弾きながら頭で理論的に?覚えようとします。音楽と関係なく、感覚でもなく、記憶として覚えます。

具体的には、各フレーズによって、大まかに次の3つのいずれかに当てはまることが多いです。

  • 似たフレーズとの比較で覚える
  • ボタンや鍵盤の位置で覚える
  • 音名で覚える

なお、本番では、弾きながら常にこれらを意識している訳ではありません。
ただ、こちらの方法でも暗譜しておくと、緊張して感覚がいつもと全く違う場合でも、暗譜の 全く別の もうひとつの引き出し(‟頭”という引き出し)からも思い出せるイメージなので、私の場合は 気持ちの上でも安心して演奏できます

…ということで、今 挙げた3つについて、もう少し詳しく書いてみます。

似たフレーズを比較して覚える

同じようなフレーズが別の場所にあれば、それらを見比べて、相違する音符などを意識して覚えていきます。
また、運指(指使い)も 統一しておきます。

ボタンや鍵盤の位置で覚える

左:ボタン

ボタンの位置で覚えます。

具体的には、印のあるCやEを軸にして「Cの2つ上!」「Eの斜め下」など。
または、前の小節などに同じ音があれば、その指はそこに置いたままにしておいたり、その音(そのボタンの場所)との距離感を覚えておきます。

右:鍵盤

‟アコーディオンあるある(?)” かとも思うのですが、弾いているときに鍵盤を見ても、ピアノのように鍵盤の正面(真上)から見ているわけでなく、鍵盤の横から見ている状態なので 見づらく、瞬時にはどの鍵盤かを判別できないことが多々あります。

そうしたことから、私は目だけでなく、次のようなことを意識することも多いです。

  • 白鍵が2つ並んでいる音(シ・ド/ミ・ファ)は、その前後の黒鍵を目印にして、黒鍵に指をひっかけて弾く。
  • オクターブの感覚は掴んでおいて、その距離感を利用する。
  • 運指はできるだけシンプルにする。また、似たフレーズは運指を統一する。
音名で覚える

メロディ

全部ではありませんが、右のメロディは、だいたい音名でも覚えています。

例:「ちょうちょ」の場合
…弾きながら「ソミミー ファレレー」と頭の中で言える状況
ちなみに重音の場合は、メロディライン(単音)の音を把握しています)

これが役立つ場面というと、最悪の状況を想定したかたちとなりますが…、
途中で止まってしまったり、弾き直しもできなくなり、収集がつかなくなりそうなとき等に、最終手段として、曲を止めずに右のメロディだけは弾き続けられます。

なお、「音名で覚えている」と言っても、この場合は あくまで、‟実際に弾いているとき”には 音名を頭の中で言いながら弾ける という状況であり、‟実際に弾いていないとき”に 音名を暗唱することはできません。

各フレーズの一番はじめの音

各フレーズの一番はじめの音は、音名やコードを覚えておきます。

例:「ちょうちょ」の場合
…曲の出だしミミー ファレレー…のフレーズ)は「右はソで、左はC」、次のフレーズ(右がレレレ レミファー…のフレーズの はじめの音は「右はレで、左はG」と覚えている状況

これをしておくと、万一、途中で止まってしまい、キリのいいフレーズの頭まで戻って弾き直した方が良い場合などに、焦らずスムーズに弾き直すことができます。

昔から音名で覚えていたわけではありません。

以前、生徒として出演した教室の発表会本番などで、緊張し過ぎて 頭が真っ白になってしまい、まさに勢いだけで弾いて、辛うじて曲の最後まで辿り着いたという怖すぎた経験から、それ以降は音名でも覚えておくようになりました。

感覚で弾けなくなりそうになったら、頭で音名を思い出すという場合もあります。

私の場合は、感覚だけの覚え方だと、本番で「もし止まったら最後まで弾き通せないかもしれない!」とずっとヒヤヒヤしながら弾くことになり、スリルがありすぎて演奏に集中できなくなるので、
そうした不安要素をひとつでも減らしておくために、覚え方の引き出しを増やして、‟感覚による暗譜” と ‟頭による暗譜” の両方の方法(引き出し)を持っておくというかたちです。

ひとこと

常に暗譜で弾く人は そこまで多いわけではないからか、「暗譜で弾いて凄いね」と お声掛けいただくこともあります。
ですが、私自身は 特に暗譜が得意というわけでもありません(人前で弾く場合の習慣にはなりつつありますが

ただ 単純に、聴いてくださる方も 自分自身も、アコーディオンを より楽しむには どうしたら良いかなぁと考えてみたときに、私の場合は 今回の記事に書いたような理由から 暗譜した方が良いだろうなぁということで、暗譜しています。

暗譜は 目的ではなく、アコーディオンを さらに楽しむための手段のひとつのように思っています。

ちなみに、私自身が暗譜するようになったきっかけは…
私が生徒として通っている平山教室の発表会が
出演者全員「暗譜が必須!」だったからです(笑)
その当時は暗譜の理由まで考えておらず、単純に「へぇ~、教室の発表会は暗譜なんだー。じゃぁ暗譜しなきゃ」という感じだったような気がします(笑)

♪おまけ)クラスの弾き合い会

私のクラスでは、毎年「石井クラス アコーディオン弾き合い会」を開催し、1年ごとに「発表会編」と「〇〇〇編(発表会ではない形)」を交互におこなっています。

暗譜の良さも感じていただけたら という私の想いもあり、「発表会編」の年は「絶対に暗譜!」としているので、皆さんはそれに付き合ってくださっています。

一方で、「〇〇〇編(発表会ではない形)」の年は「楽譜を見て弾いてもOK(※暗譜オススメ!)」としているのですが、、半数以上の方が譜面台を置いて演奏されています…!

暗譜の良さもお伝えできるように、また、発表会編の年は、皆さんが 暗譜必須が原因で気が重くならないように、無理なく暗譜していけるよう 私自身もレッスンを進めていかなければとも思っています。

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