アコーディオンのスイッチ

通常の(独奏用)アコーディオンには“スイッチ”が あり、そのスイッチで 音色を変えることができます。

このことは、ふだんアコーディオンに触れない人には 殆ど知られていないようで、演奏させていただく際の合間のお話や 体験レッスン時などに この“スイッチ”のこともお伝えすると、以前に書いた“左のボタン”と同じように 驚かれます。

そこで 今回は、この「スイッチ」について、楽器の内部も少し見つつ 触れていきます。

今回は、主に 右側のスイッチについて書いています。
私の解釈による内容のため、異なる点もあるかもしれません。

スイッチのこと

スイッチの有無や数は 楽器によって異なります。
通常(独奏用)の楽器は、右側(鍵盤側)に 複数、左(ボタン側)に いくつかあるものが多いです。

今回は、主に 右側(鍵盤側)のスイッチについて、書いていきます。

スイッチの呼び名

いくつか呼び方があるなか、次のように呼ばれるのをよく聞く印象です。

  • 音色ねいろ切替きりかえ)スイッチ
  • レジスター
  • メロディースイッチ

などなど。

※ 今回は「スイッチ」と呼びます。

こうした呼び名のとおり、スイッチで いろいろな音色に切り替えられるので、
曲によって、または 曲の途中でも、音色を変えることができます!(どのように変わるかは、後ほど。)

スイッチの位置

右側のスイッチについて書いています。

スイッチは、鍵盤(または ボタン)と フロントグリルの間にあります。
(・フロントグリル … 鍵盤と蛇腹じゃばらの間の蓋のような場所のこと=楽器によっていろいろな模様がついているところ)

それに加えて、ときどき 次のような場所に ついている楽器もあります。

マスタースイッチ
  • マスタースイッチ
    ・右鍵盤の淵・右の手首側にある 縦長のスイッチ
    ・右の手首のあたりで押す
  • あごスイッチ※特注品
    ・右鍵盤の上部(一番低い音の鍵盤の上のあたりに、ボタン型で付いている)
    ・顎で押す
  • 背面 ※特注品
    ・鍵盤の裏側

音色は どう変わる?

スイッチで、音色は どのように変わるかを 見ていきます。

どのような音色が出るかは、スイッチに表記されているマークと併せて見ると 一目瞭然です。

先ずは、3つを取り上げます。

H (エイチ)

Highハイ

M (エム)

Middleミドル

L (エル)

Lowロー

アルファベット(カッコ内の読み方)で 呼ぶことも多いです。

マークの“●”の位置のように、スイッチで変わるのは、先ずは 音の高さ(音域です。
例えば、一か所の「ド」の鍵盤を押したまま、これらのスイッチを ひとつずつ押してみると、各スイッチで このような音が出ます。

  • Hエイチ のスイッチ… 高い音域の「ド」の音
  • Mエム のスイッチ … 真ん中の音域の「ド」
  • Lエル のスイッチ … 低い音域の「ド」

つまり、音の高さが1オクターブずつ変わります!

オクターブ…同じ名前で、異なる高さの音のこと(例∶「ラ」と、次の高さの「ラ」)

そして、スイッチで、H・M・Lの どれを使うかを選んでいます。

“H・M・L” を それぞれ「笛」でイメージすると分かりやすいかもしれません。

すなわち、1台のアコーディオンの中には いくつか笛が入っていて、笛の種類は “Hの音域の笛・Mの音域の笛・Lの音域の笛”。そして “スイッチで どの笛を使うかを選んでいる” ということです。

スイッチの種類

楽器によって、スイッチ(入っているリードの種類)は異なります。

上記のほかに、次のようなスイッチ等々もあります。

M M (エム エム)

Middle Middleミドル ミドル

M M M (スリー エム)

Middle Middle Middleミドル ミドル ミドル

M M L (エム エム エル)

Middle Middle Lowミドル ミドル ロー

例えば 先程と同様に、一か所の「ド」の鍵盤を押したまま、次のスイッチを順番に押してみると、各スイッチで このような音が出ます。

  • M M(エム エム)
    … 真ん中の音域の「ド」の音が、2つ同時に出る
  • M M M (スリー エム)
    … 真ん中の音域の「ド」の音が、3つ同時に出る
  • M M L(エム エム エル)
    … 真ん中の音域の「ド」が2つと、低い音域の「ド」の音が、3つ同時に出る

「笛」でイメージしてみると…
1台のアコーディオンに、“M”の笛が、 2 or 3つ 入っているということです。

「M M」や「M M M」というのは、1台の中に“M”の音域の笛が 2 or 3本 入っていて、“M M”は2本同時に、“M M M”は3本 同時に鳴らしています。

同じように「M M L」は、“M”の音域の笛を2本と、“L”の音域の笛を1本の、合計3本を 同時に鳴らせます。

このように、スイッチの切替えにより、アコーディオン1台(一人)で 複数の音色(笛)を“同時に”鳴らすこともできます

ちなみに、「M M」や「M M M」は、同じ“M”の音域の笛が「2つ」や「3つ」ということになりますが、これらの“M”の音は ごく僅かに 音の高さ(ピッチ)を ずらしてあります。

1つずつMの音を聞いても 違いは分かりにくいほど僅かなズレですが、2つ(または3つ)のMを同時に鳴らすと それらの音は共鳴し合って音が響くので、「M」と「M M」と「M M M」の音の違いは 明瞭です。
また この M M や、特に M M M の音色は 特殊(?)で、アコーディオンっぽい音 と言われることもあります

アコーディオンの内部

ここで少しだけ、アコーディオンの内部を見てみます。

アコーディオンは、「リード楽器」。
つまり、蛇腹ジャバラで送った風によって「リード(金属板の薄い板)が振るえることで、音が鳴ります。

これらのリードに“Hのリード・Mのリード・Lのリード”とあり、スイッチで 鳴らすリードを選んでいるということです!

リード
リードが取り付けられたリードボックス3つ
リードボックスが取り付けられた状態(蛇腹ジャバラのところで パカッと分割して置いたもの)

入っているリードの種類の数に伴い リードも増え、しかも蛇腹を開くときと閉じるときのリードは別なので…、1台に入っている“リード”の枚数は、ものすごく多いです!
楽器の構造(音が出る仕組みなど)の話も とてもおもしろいですが、今回は少し回り道になってしまうので、またいつか

実際のスイッチ

楽器によって、入っているリードの種類などは異なります。

ただ 通常は、リードの種類は 最大で3つ「 H・M・L 」、
また、1つの楽器に入っているリードは、最大でほぼ4つ「H・M・M・L 」または「 M・M・M・L 」です。(稀に5つ「 H・M・M・M・L 」の楽器もあります…!)

そして、スイッチで、音の種類や、それらの音の組み合わせを変えられます!

ここからは、いくつか 実際のスイッチも見ながら進めていきます。
先に書いたように、スイッチに表記されているマークと併せて見ると、どのような音が出るのか分かります。

これは『 M M Lエム エム エル 』の楽器です。
…Mのリードが2つと、Lのリードが1つ入っている楽器

したがい、スイッチの切替で出せる音の種類やその組み合わせは、写真の通り「L」「ML」「MML」「MM」「M」です!

どの楽器も 通常、中央にあるスイッチが その楽器の 全て・・の種類のリードを 同時に鳴らすスイッチです。

よって、この楽器に入っているリードの種類(笛)は「Mが2つと、Lが1つ」ということが分かり、
また、その合計3つの笛を 同時に鳴らすこともできる、ということ。

なお、すべてのリードの種類(笛)を 同時に鳴らす この中央のスイッチのことを、「マスター」と呼ぶこともあります。

これは『 H M M Lエイチ エム エム エル 』の楽器です。
…Hリード1つ、Mリード2つ、Lリードが1つ入った楽器

したがい、1つ前の楽器よりも、音の種類も 組み合わせパターンも増え、
前の楽器の音色に加えて、「H」「HMML」「HL」「HMM」等々の音も、スイッチの切替で出すことができます!

これはM M Mスリーエムの楽器です。
…Mリードが3つ入った楽器
このような(MMMの音色が出る)楽器自体のことを「ミュゼット」と呼ぶこともあります。

したがい、「MMM」「MM」「M」の音が出ます。先にあげた2つの楽器にはない “MMMスリーエム”の特殊な音色が出ます。

ちなみに(ここまで意識しなくて良いと思いますが…)、

この楽器をよく見てみると、「MM」のスイッチが2つあります。

即ち、3つの“M (リードの種類(笛))”は 全て 真ん中Mの音域ですが、先に書いた通り この3つの音の高さ(ピッチ)は ほんの僅かにズレているので、

2つある「MM」のスイッチでは、それぞれで使っているMの笛(リード)の組み合わせが異なっています。

つまり、3つのMは 其々「僅かに低いM・真ん中のM・僅かに高いM」となっていて、1つ目の「MM」スイッチは「僅かに低いM&真ん中のM」の笛の音が同時に、2つ目の「MM」は「僅かに低いM&僅かに高いM」の笛の音が 同時に出るというわけです。

また、このようなスイッチもあります!

スイッチに、マークの表示が…無い!
… スイッチ付近に文字表記があり、、MUSETミュゼットは「MM」、OBOEオーボエは「M」のことで、
これは『 M M 』 の楽器です。

各スイッチ付近にある この文字表記は、おおよそ いろいろな楽器の名称になっていて、
マークと文字の両方が表示されている楽器もあります。

この楽器は「HM ML」なので、音色の組合せも たくさん
スイッチの文字表記は、「BASSOON・BANDON・ORGAN・ACCORD・HARMON・MASTER・CELESTE・VIOLIN・OBOE・CLARINET・PICCOLO」!

ここまで、たびたび「笛」に喩えましたが、実際にアコーディオンの種類を そのように呼んだりもします。
つまり、入っているリードが 3種類(例∶MMM、MML)の場合に3列笛さんれつぶえ、4種類(HMML、MMML)の場合に4列笛よんれつぶえとも言います。
(例∶最後の写真の楽器は“(右·鍵盤側が)4列笛の楽器”です。)

スイッチによる音の高さのことに触れてきたので、アコーディオンそのものの 音の高さ(ピッチ・周波数)についても触れておくと、、だいたい アコーディオンのピッチは 442Hzヘルツのようです。
※ 昔の楽器は、高いピッチの場合もあります

ひとこと

(※以下も私の解釈で書いているため、異なる箇所もあるかもしれません。)

子どもの頃に 小学校の音楽室で アコーディオンを見たことがある方は 多いようです。
ただ、小学校のアコーディオンは、右の鍵盤だけで 左のボタンは無く、当然 スイッチもありませんでした。

思い返すと、それらの楽器はカラフルで、その色ごとに「ソプラノ アコーディオン」「アルト アコーディオン」「テナー アコーディオン」「バス アコーディオン」と 音域が異なっていたような気がします。

(以下、アコ=アコーディオンのこと)

私たちが普段使っている 本来の(独奏用)アコは、1つのアコの中に 複数の種類のリードが入っていますが、小学校のアコは 1種類だけです。…おそらく。。

よって、かなり大雑把ですが、次のように考えても良いのかなとも思っています(※おそらく厳密には異なります)

… 私たちが使っている本来の(独奏用)アコーディオンは、小学校にあった 音の高さの異なる2〜4台のアコ(の中身=笛・リード)が、1台の中に全部入っていて、
スイッチで、それらのうち、どのアコを使うかを選んでいる、と。

以前に 小学校での演奏で、その小学校の先生から「1台で こんなに たくさんの いろいろな音が出て、魔法の楽器ですね!」と お声がけいただいたことがあり、
それが 私は とても嬉しく、改めて、アコーディオンは 魅力満載の楽器だなぁと実感した記憶もあります。

演奏によって引き出される魅力だけでなく、楽器そのものの面白さもある楽器、こうしたアコーディオンの さまざまな魅力も、いろいろな人や 場などを通して 伝わっていくと良いなぁと、私もそのうちの一人になれたら良いなぁと思います。